おすすめ本 「投資家がお金より大切にしていること」 《藤野英人》
日頃から投資に関する本をよく読みますが、本書は投資で資産を増やすための方法が書いてあるのではなく、特に日本人に対してお金に対するイメージとお金の使い方を深く考えるように促す内容であり、また一流の投資家になるための心構えとしてこの本には非常に感動しました。
お金の投資とは本来「人にかける期待・人への信頼・応援」であり決してギャンブルではないと言うことが理解できます。
著者の藤野さんは企業分析本・起業本など色々出版されていますが、この本が一番心に響きました。
私が特に考えさせられた部分
①日本人はお金を稼ぐことを「汚い」と考える
⇒昔から日本人にはお金は「汗水流して苦労して働いて稼がなければならない」といった清貧の思想が根付いており、「金持ち=悪」といったイメージによる「貧しいこと=清い」という錯覚に陥らせているが、実際には 「清く豊かに生きることは可能であり、清豊こそが企業を長期的に成長させる」
アメリカにはお金持ちが尊敬される文化があり、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブスにしても世の中に新しい価値を提供し、世の中のために貢献していると考えられる。
成功しているビジネスは世の中に新しい付加価値を提供し、雇用を生み出し社会を活性化し豊かにしている。
またアメリカのお金持ちたちは設けたお金は寄付活動に使って社会に還元している。
投資の目的とは「世の中を良くして明るい未来を作ること」
②ブラック企業を生み出しているのは私たち消費者
⇒ 2012年の高速バスでバスが防護壁に突っ込み7名が死亡した事故。運転手を休みなしで長時間働かせるバス会社が悪いと言われるが、新幹線なら1万円・飛行機なら2万円かかるところが、バスなら3,500円で行けてしまう。バス会社はここまでしないと経営が立ちいかないほど追い込まれており、このしわ寄せが不幸な結果を生み出した。 居酒屋の24h営業も消費者が望むから営業している。
ブラック消費者が多く、より少ないお金で過剰なサービスを求める。
⇒学生が飲食店でアルバイトしていると、お客さんの強烈さに驚くと言う。 安い居酒屋で1杯199円のビールの出てくるのが少し遅くなっただけで「ふざけるな!」と怒鳴り散らす。 電車が少し遅延しただけで駅員に暴言を吐く。 1分2分遅れただけで「通勤中の皆様には大変ご迷惑をおかけします、 お詫び申し上げます」などとアナウンスが流さなければならない。
世界にはこんなことでアナウンスを流す国はありません。
中国では庶民が通う安い飲食店でラーメンの中に髪の毛が入っていても誰も文句は言いません。
なぜならそこは安い店だからです。皆そこまでのサービスレベルを求めていません。
高級店で髪の毛が入っていれば中国人も文句を言いますが、それはよいサービスを受けるためにそ
れ相応の金額を払っているからです。でも日本であれば380円の牛丼に髪の毛が入っていても許されないでしょう。これは働く方の立場からすれば大きな負担になることなのです。
ひとりひとりが「良い消費者になる」
⇒居酒屋やレストランでは必ず「ありがとう」と言うようにする。おいしい料理と素晴らしいサービスを受けているのだ から感謝の言葉を伝えるのは当然のことである。
また生ビールをテーブルにドンッと叩きつけるようなサービスを受けた場合でも怒鳴らない。
タクシーを降りるときに御礼を言う人の割合はかなり少ないそうです(20~30人に一人)。
ただ紳士っぽい人・お金持ちのように見える人・長距離を乗る人ほどお礼を言うそうです。
良い消費者でなければ、良い生産者・良い投資家にはなれない。
③良い経営者は未来の話をする
ラスベガスの展示会でビルゲイツは未来の世界に対する自社の使命を語った。 「10年後の社会はこうなっている。自動車は自動運転が進みどんな人でも安全に目的地まで、場合にっては寝ながらでも着けるようになる、マイクロソフトはそういう豊かな社会のために存在している。 「〇〇な未来を実現するために、我々は存在している」とする使命志向が重要。 それに対してソニーの社長はアイボを出して「ソニーの製品はいかに素晴らしいか」を熱弁、技術アピールに終始した。
④日本経済の足を引っ張っているのは経済連に名を連ねるような大企業
⇒2002年から2012年の株価をみてみると、東証の株価指数であるTOPIX(東証一部の全銘柄)は2%の上昇に過ぎす、更にTOPIX CORE 30(東証一部の中の時価総額の高い大企業)はなんと24%のマイナス。更には日本企業の代表ともいうべき日本経団連の会長・副会長を務める18社の中で株価が上がっているのはたったの6社。 これに対し東証二部の企業ではここ10年で67%のプラスになっている。 なので、日本全体を指して「失われた10年・失われた20年」というのは正しくない、 日本の大企業がダメだったただけで、成長している企業はたくさんある。
本書はこれから株や投資信託を始めようとする人に直接的なアドバイスをするものではありませんが、投資を始める前にまず自分がどんな人間になろうとし、お金に対しどんな感情を持ちどんな使い方をすべきなのかという事に対し、よい勉強になる良書だと感じました。是非一読ください。